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忘備録

重要なニュースなので記録の意味を込めてとどめておく。

NHKニュースより』


認知症の高齢者が急増するなか、実際には認知症でないのに認知症と診断されていた人が去年1年間に全国で少なくとも3500人余りに上ることが、NHKが専門医を対象に行ったアンケート調査で初めて明らかになりました。中には認知症の治療薬を服用し、深刻な副作用が出ていたケースがあることも分かり、厚生労働省は「こうした実態があるとすれば問題で診断が適切に行われるよう対策を急ぎたい」と話しています。

認知症の高齢者は全国で462万人と推計され、10年後には最大で、高齢者の5人に1人に当たる730万人に増加するとされています。
NHKは、ことし6月、認知症の診断や治療について、日本認知症学会と日本老年精神医学会に所属する認知症の専門医、1634人を対象にアンケート調査を行い、全体の32%に当たる531人から回答を得ました。
この中で、「ほかの施設で認知症とされた患者を診断した結果認知症ではなかったケースがある」と答えた専門医は426人で、回答者の80%でした。
1人で複数の人を診ているケースが多く、認知症ではないのに認知症と診断されていた人は去年1年間に全国で少なくとも3500人余りに上ることが明らかになりました。
専門医が改めて診断を行った結果正しい病名などで最も多かったのは「うつ病」が26%、次いで手術のあとなどに意識が混乱する「せん妄」が23%、持病の薬の副作用でもの忘れなど認知症のような症状が出ていたケースが14%、中には、正常と判断された人もいました。
さらに、認知症でない人が治療薬を服用し副作用が出ていたケースがあると回答した専門医はおよそ35%で、中には、食欲が低下したり、怒りっぽくなったりした人もいたということです。
認知症の診断について学会が定めたガイドラインでは、症状や生活の状況などを聞き取る「問診」をはじめ、血液や認知機能を確認する検査を行うとともに、脳の画像検査の実施が望ましいとされています。
しかし、これまでの取材では1回の短時間の問診だけで薬を処方されたケースがあったほか、診断そのものが難しいという声も聞かれました。
厚生労働省は調査のような実態があるとすれば問題だとしたうえで、「診断が適切に行われるよう医師の対応力を高めるなど対策を急ぎたい」と話しています。一方、日本老年精神医学会の理事長で順天堂大学の新井平伊教授は「現場の実態を現す初めての数字で、こうした人たちがさらにいる可能性がある。認知症と紛らわしい病気の中には、治る可能性があるものもあり、かかりつけ医はこうした病気に気づいて早い段階で専門医と連携を取って正しい診断につなげてほしい」と話しています。
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認知症でなくうつ病だった男性

いったん認知症と診断されたものの、専門医を受診した結果、認知症ではなく別の病気だったことが分かった人もいます。
東京・大田区に住む味志信義さん(73)は、3年前、「アルツハイマー認知症」と診断されました。味志さんは、紳士服を仕立てる店を経営していましたが、物忘れや採寸の間違いが目立つようになり、およそ50年間続けてきた仕事をやめました。処方された認知症の治療薬を飲んでいましたが、イライラしたり興奮したりすることが多く、家族に強い口調で当たることも増えていったといいます。
症状がよくならないためことし5月、認知症の専門医を受診したところ認知症ではなく、「うつ病」と診断されました。
専門医は、脳の画像や血流を調べる検査、認知機能を確かめるテスト、それに本人や家族に症状や生活の状況などを聞いたうえで気分の落ち込みが著しくみられることからうつ病と診断したということです。
専門医によりますと、味志さんに現れていたもの忘れの症状はうつ病によって、脳の機能が低下したことが原因である可能性が高いということです。
味志さんはうつ病の薬を飲み始め、症状が落ち着いてきたといいます。
味志信義さんは「今は気持ちがとても穏やかになって、少し前のことを冷静に思い返すことができます。妻や同居する娘や孫たちにもひどいことを言ってしまったと申し訳なく思っています」と話していました。
2年余りの間味志さんに認知症の薬を出していた診療所の医師は、NHKの取材に対し、「本人が、『家族からもの忘れがあると言われる』と訴えたため薬を出し続けていた。当時は、うつ病の兆候は見られなかった」と話しています。
認知症の専門医で味志さんを診察した工藤千明医師は「認知症が疑わしいけれど、不明確なときは、かかりつけ医の先生から、専門医に早く紹介してもらうことで、患者さんに不利益がでないような診断をしなければならない」と話しています。


異常ないのに薬服用で副作用

認知症ではないのに認知症と診断された結果、治療薬を飲み続け副作用に悩んでいた人もいます。
東京都内に住む70代の女性はおととし、めまいや吐き気の症状を訴え自宅近くの内科の診療所を受診しました。
ここでは、別の病院で撮った脳の画像検査の結果をもとに「アルツハイマー認知症」と診断されました。
生活の状況や詳しい症状などについては聞かれなかったといいます。
女性は、処方された認知症の治療薬を1年半にわたって飲み続けましたが、次第にイライラして怒りっぽくなり夫に強い口調であたったり通っていた趣味のサークルでも口論になったりしたといいます。
女性は当時のことについて「少しのことで興奮してしまいなんでこんなにいらいらするんだろうと自分でも思っていた」と話していました。
また、夫は「薬を飲み始めてから攻撃的な口調で怒ることが増え感情が激しくなったと感じていた」と話していました。
女性は先月、認知症の専門医の元を訪れ脳の血流を調べる検査や認知機能を確かめるテストを行った結果、認知症ではなく異常はないと告げられました。
女性は認知症の治療薬の服用をやめたところ、イライラするなどの症状はおさまったということです。
女性は「必要のない薬を飲まなくてよくなり安心した。最初に行った診療所でも時間をかけて問診したり検査をしたりして判断してほしかった」と話していました。
認知症の専門医で女性を診察した新百合ヶ丘総合病院の堀智勝名誉院長は「認知症でないのに認知症と診断されている患者は年に数人はいる。画像に頼りすぎたり、簡単な問診だけしか行っていないのが原因だが認知症の診断は問診と検査の両方を速やかに行い総合的に判断すべきだ」と話していました。


日本医師会

全国の開業医などでつくる日本医師会はかかりつけ医の認知症への対応力を高めるという国の方針に合わせて認知症の主な症状や診断方法などを学ぶ研修を始めています。
ことし3月には認知症を診断するためのマニュアルを初めて作成し、適切な診断や治療が進められるようかかりつけ医の対応力を向上させたいとしています。
日本医師会の鈴木邦彦常任理事は今回のアンケート調査の結果について「決して少なくない数字で診断がきちんとされていないと患者や家族が思うのは当然だ」としたうえで「認知症は専門の医師だけが診る疾患ではなく、かかりつけ医も診る疾患の1つになった。かかりつけ医のレベルアップと専門医との連携が重要になってくる」と話しています。