ユニティ社の立ち上げを支援した1人で、現在セノリティクス研究を牽引する大手総合病院メイヨークリニックのジェームズ・カークランド教授によれば、老化細胞の存在が明らかになったのが1960年代。そこから研究が進み、加齢とともに老化細胞が増えること、それらが通常の細胞と異なりなかなか死なないことなどがわかってきた。
そして2004年頃に老化細胞と加齢との関係や、老化細胞が分泌する炎症を起こす因子が判明。カークランド氏らの研究チームは2005年、「老化細胞を選択的に破壊できれば、加齢疾患を防ぎ、健康寿命を延ばせるのではないか」という仮説にたどり着いた。
カークランド氏らは老化細胞だけを破壊する仕組みを考案し、その機能を果たす化合物を探した。そして2013年、最初の化合物が見つかり、セノリティクスの臨床研究が始まった。マウスでの実験を繰り返す中でわかったのが、人間であれば80歳くらいのマウスにセノリティクスを投与すると、寿命が最大36%伸びたということ。当時発表された論文は大きな話題を集めた。
↑
週刊東洋経済記事より。
老化細胞の選択的破壊で、炎症物質の放出を防ぎ、アルツハイマーやガンなどの発生を抑制して健康寿命を延ばす。
視点は面白いし、あくなき不老長寿の夢へ迫れる研究テーマは科学者には魅力的だろう。ただ、一点気を付けたいのは、アポトーシスに代表される細胞自死は生物が種の存続を続けるに当たり必要な営みであるという視点だ。
新陳代謝することで、フレッシュな状態に生命を保つには死を伴う必要があり、これが細胞単位で起こるのが、アポトーシスから始まる新陳代謝だ。そもそも、人間だけにかかわらず、適当な寿命が、生まれてから、細胞分裂のテロメアの尻尾で回数が決められているように、死ぬことは生命にとってとても大切な行動の一つだと私は思っている。
それを人為的にとてつもなく遅らせることで、起こるリスクについては一切まだ議論されていない。そもそも、生命体にとって不老不死、不老長寿になったほうが良いのであればそういう風に進化した個体がもっといてもいいはずなのだ。人類サイズで、不老長寿が居ないように、そうなると困るから、進化しないともとらえられる。
例えば、300歳くらいまで生きられるとして、今の20歳くらいで大学に進学し、23歳くらいで社会にでるシステムなんかはそのまま崩壊する。だって、その人を食わせて行くのにあとざっくり、270年かかるのよ?
年金制度が一発崩壊だわ。
これは人間が作った制度の話だが、恐らく細胞レベルや生き物レベルで、長く生きることで起こる不都合が、顕在化せずに眠っていると思う。健康長寿は歓迎すべきことかもしれないが、片方だけの研究では片手落ちで、どちらも相反する価値の方向性も研究される事が望ましいと私は思う。
出ないと致命的な見落としをしてしまう様に思えてならい。