生徒の自尊心や親の責任感などの社会規範が、お金の介入によっていかに損なわれうるかということだった。お金が介入すると、それらの社会規範が労力への対価とか遵守への報酬とかいう市場規範に取って代わられてしまう。
哲学者マイケル・サンデルはまさにこのような影響に警鐘を鳴らし、現金を払うと、もとからある意欲やその意欲を支えていた価値観が損なわれると主張している。サンデルが例にあげているのは、テキサス州ダラスの学習到達度の低い学校に導入された「学んで稼ぐ」と呼ばれる制度だ。
この制度は6歳の児童に、本を1冊読むごとに2ドル与えるものだった。制度の開始から1年のあいだに、子どもたちの国語力には向上が見られた。しかし長期的に見たとき、そのようなお金は子どもたちの学ぼうとする意欲にどんな影響を及ぼすだろうか。「市場は一つの手段だが、清らかなものではない」とサンデルは指摘する。「どうしても懸念されるのは、子どもたちがお金をもらうことで、読書をお金を得る手段と考えるようになってしまい、その結果、読書そのものを好む気持ちが弱まったり、忘れられたり、失われたりすることだ」。
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週刊東洋経済記事より。
学習能力は伸びるのだが、一度学習が稼ぐ手段にとって代わってしまうと、知識欲や向学心、好奇心の様な無償の感覚が失われてしまい取り返せないのだそうだ(笑)
解りやすく、安易な方向に流れやすいという意味では人間の弱点を突いた良い手なのかもしれない(笑)なので、子供にご褒美として、いろいろ与えるのは良いが、それが知らず知らずのうちに本来犯すことのできない純度の高い感情を殲滅している可能性があるという事を教育という観点から親は理解しておく必要があるのかもしれない。