本作で描かれる「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」とは、発達心理学の分野で研究が進められてきた概念で、カナダの心理学者エリオット・ジャックが1965年に提唱した。中年期にさしかかったあたりで、家庭や職場での役割の変化、そして加齢などによる体力の衰えなどから、現状に対する不満や焦り、迷いなどを感じたり、他人と比較して満たされない思いにかられたりするなど、ストレスを感じる状態になることを言う。
余談だが、日本のコメディー映画である周防正行監督の『Shall we ダンス?』がアメリカでヒットした原因のひとつとして、同作の主人公が漠然と抱いていた「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」がアメリカの観客にも共感を持って迎えられたこともあったと言われている。
本作の監督、脚本を担当したマイク・ホワイトは、作品制作のきっかけは自分の父親に関する物語を書きたかったことにあったという。
そして、牧師であったにもかかわらず、自分の人生に疑問を持っていたという父親について「わたしは父を愛している。彼自身が、自分が期待しているように生きることが一度もかなわなかったと感じていたとしても、わたしは父を成功者だと思っている。この映画を作りたかった理由のひとつに、それを伝えたかったというのがある」と語る。
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週刊東洋経済記事より。
この映画監督凄い所に目をつけたなと感心する。
しかも、その着眼点が自身の父親への励ましに通じているというのだから脱帽だ。
男性学という分野がやっと日の目を見始めた昨今、この様な映画などの作品を通じて、結論が出ないのに悶々とすることに耐えるネガティブケイパビリティの様な世界感を取り上げた情報発信が多く出る事を望みます。