トマの日記

忘備録、雑感、所感などを日記形式で書き綴る。昔はノートに日記を付けていたけれど、ノートを持ち歩かなければいけなかったので、ブログ形式でWeb更新出来る様に変えたのがきっかけ。

TSMC(台湾半導体産業大手)の失敗とは?

日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。

重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタ豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。

(中略)

TSMCアリゾナ新工場が補助金の恩恵を受けられるのは喜ばしいことだ。しかし問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」

チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません。

 

週刊東洋経済WEB記事より。

 

TSMCが、アメリカのアリゾナで大規模工場をアメリカの援助で作ったものの大失敗して、製造がうまく行かなかった。それは高度な品質基準を要求される現在の半導体製造に於いて、人種的な違いや、それこそお国柄的な部分で、追いつかない、変えられない事が有ったからだ。

 

かつて日本は半導体分野で世界的にトップクラスだったが、今は見る影もない。現在の台湾技術と日本の半導体製造技術では火縄銃と最新兵器くらいの差が開いている。

 

だが、アメリカに出来なかったことを台湾が日本に期待し、然もだんだん前のめりに日本に注目してくれているのには訳がある。

 

ただ単に技術力が有って、ちゃんとモノを作ってくれるだけではない。作る為と言うより、作り込む為、量産する中で儲けを出す為の生産技術能力に秀でている事が台湾側に理解されてきたからだ。

 

現在ただ単に半導体単体の性能で言ったらIBMが世界トップクラスなのだろう。

ただ、元記事でも指摘している通り、大量生産している訳では無い。

TSMCの商売が凄い点は『顧客の要望や需給に対し、全て量産ベースで高性能な半導体を供給できる事』にある。これを工場と言う箱が出来たからと言って、現地(アメリカなどの生産地)で再現できるか?と言ったら、それは全く別の話なのだ。

 

ここにTSMCが日本を頼ってくれている大きな理由の一つがある。

 

日本は自動車産業を始め、高度な技術を要する製造品を現地展開するための生産移管能力に優れている。事に国内でこれをやらせると恐らく正解で右に出る国は無い。この得意技に加えて今回は本気で政府が半導体分野の復活をにらんでいる為、金も補助してくれている。だから、TSMCがだんだん本気になってくれているのだ。

 

加えてTSMCは記事冒頭で言っている通り、重要顧客として、トヨタ自動車apple社を目的にしている。

 

半導体は高性能である必要があると同時に『大量に使ってもらえる事』で価値を急拡大できる商売だ。高性能半導体を1個欲しいというのでは商売にならない。自動車やスマホなど大量に作る製品が存在して初めて莫大な価値を生む訳だ。コストも勿論関係してくる。

 

加えて、日本は半導体を製造する為の製造機器で世界トップクラス、製造する為の試薬関係でもトップシェアを持っている。

 

特に試薬分野では、純度が劣るせいで、韓国が大失敗した事があるくらいで、日本の化学資材が無いと高精度の半導体製造は難しい部分がある。

 

日本国内に半導体製造工場が、製造設備、製造の為に使う薬品や資材も集めやすく改善もしやすい。大量生産向きな環境が整っていると言える。

 

そう言った意味で、今回のTSMC熊本工場は日本の半導体製造復権のきっかけに大いに期待できることだと思う。